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内分泌学的検査 IGF-Ⅰ SDスコア 計算ツール

sFlt-1/PlGF比

IGF-Ⅰ(Insulin-like Growth Factor I)とは?

  • ソマトメジンCとも呼ばれ、成長ホルモン(GH:Growth Hormone)の作用により主に肝臓で産生されるホルモンです
  • GHの分泌異常を反映:
    • 先端巨大症や下垂体性巨人症では高値になります
    • 成長ホルモン分泌不全症では低値になります
  • GHに比べて血中半減期が長く、日内変動が少ないです
  • 年齢や性別によって変動がみられます

成長ホルモンの分泌調整

GHは視床下部から分泌される成長ホルモン放出ホルモン(GHRH:Growth Hormone Releasing Hormone)により分泌が促進、GHは肝臓からのIGF-Ⅰの産生を刺激します。一方、視床下部から分泌されるソマトスタチンおよびGH自身やIGF-Ⅰによるネガティブフィードバックにより分泌が抑制されます。

成長ホルモンの分泌調整のイラスト

IGF-Ⅰ SDスコア(IGF-Ⅰ SDS)

IGF-Ⅰ値は年齢や性別によって変動がみられるため、血中IGF-Ⅰ値を評価する際は、健常人の年齢、性別基準と照らし合わせて判断する必要があります。
その際に、年齢毎のIGF-Iの平均からのばらつきを、年齢毎に正規分布に合わせて調整した指標としてSD(standard deviation)スコアが用いられることがあります。Zスコアと呼ばれることもあります。

本サイトでは、性別、年齢、血中IGF-Ⅰ値を入力するとSDスコアが算出されます。

※81歳以上につきましては、80歳として算出されます。
※SDスコアは小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位にて算出されます。

Isojima, T. et al. :Endocr J 59(9): 771-80, 2012

Isojima, T. et al. :Endocr J 70(10): 1023-1027, 2023

計算ツールをご使用するにあたっては以下の注意事項を必ずお読みください。

  • 弊社(ロシュ)のIGF-Ⅰ測定キットによる測定値が必要となります。
  • 当該ツールは疾病の診断、治療、予防を目的としていません。
  • 算出されたSDスコアは医療機関における診断に代わるものではありません。診断にあたっては、必ず医師に相談してください。
  • 月齢以下は切り捨てのうえ、選択または入力してください。

IGF-Ⅰ 年齢別・性別における基準値 (単検査)

IGF-Ⅰ 年齢別・性別における基準値 (多検査)

IGF-ⅠのSDスコアを複数同時に計算します。

詳しい計算方法

計算方法①
計算方法①のスクリーンショット

エクセルなどで「性別」「年齢」「IGF-Ⅰ値」「SDスコア」「下限」「上限」の順に項目を作成し、その下に測定値を記入してください。性別は男性は「M」、女性は「F」の半角英数字で記載してください。

月齢:切り捨て入植
年齢:半角英数字入力

※81歳以上は80歳として算出されます

計算方法②
計算方法②のスクリーンショット

計算したい「性別」「年齢」「IGF-Ⅰ値」の範囲をコピーし、「計算元データ」欄に貼り付けて、「計算する」をクリックしてください。

計算方法③
計算方法③のスクリーンショット

「計算値」に「SDスコア」「下限」「上限」 の計算結果データが表示されますので、計算結果をコピーしてください。

計算方法④
計算方法④のスクリーンショット

コピーした「SDスコア」「下限」「上限」の計算結果をエクセルなどに貼り付けてください。

IGF-Ⅰ チェックシート

IGF-Ⅰ 年齢別・性別における基準範囲の一覧表になります。

IGF-Ⅰが高値を示す例

 

Ⅰ. 主症候(注1)

  1. 手足の容積の増大
  2. 先端巨大症様顔貌(眉弓部の膨隆、鼻・口唇の肥大、下顎の突出等)
  3. 巨大舌

 

Ⅱ. 検査所見

  1. GH の分泌過剰
  2. 血中GH値がブドウ糖75g経口投与で正常域まで抑制されない(注2)
  3. 血中IGF-Ⅰの高値(注3)
  4. MRI または CT で下垂体腫瘍(腺腫)の所見を認める(注4)

 

[診断基準]

確実例:ⅠのいずれかとⅡのすべてを満たすもの。

 

(注1)発病初期例や非典型例では症候が顕著でない場合がある。

(注2)正常域とは血中GH底値 0.4ng/ml(現在のGH測定キットはリコンビナントGHに準拠した標準品を用いている。キットによりGH値が異なるため、成長科学協会のキット毎の補正式で補正したGH値で判定する)未満である。糖尿病、肝疾患、腎疾患、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、低栄養状態、思春期・青年期では血中GH値が正常域まで抑制されないことがある。また、本症では血中GH値がTRHやLHRH刺激で増加(奇異性上昇)することや、ブロモクリプチンなどのドパミン作動薬で血中GH値が増加しないことがある。

(注3)健常者の年齢・性別基準値を参照する。栄養障害、肝疾患、腎疾患、甲状腺機能低下症、コントロール不良の糖尿病などが合併すると血中IGF-Ⅰが高値を示さないことがある。一方妊娠後期ではhPLの影響で血中IGF-Ⅰは高値を示すことがある。

(注4)一般にT1強調Gd造影画像にて、正常下垂体と比較して造影されにくい病変として認められる。T2強調単純画像にて、側頭葉灰白質と比較して低信号の場合、第一世代ソマトスタチンアナログに感受性の高いdensely granulated tumorsが示唆される。トルコ鞍空洞症候群を伴って下垂体に明らかな腫瘍の所見を認めない場合がある。稀な原因ではあるが異所性GHRH産生腫瘍の場合には下垂体は過形成の所見を、異所性GH産生腫瘍の場合には下垂体は低形成の所見を呈する場合がある。

(附)ブドウ糖負荷でGHが正常域に抑制される場合や、臨床症候が軽微な場合でも、IGF-Ⅰが高値の症例は、画像検査を行い総合的に診断する。

 

Ⅰ. 主症候

著名な身長の増加:発育期にあっては身長の増加が著名で、最終身長は男子が185㎝以上、女子175㎝以上であるか、そうなると予想されるもの(注)

 

Ⅱ. 検査所見

先端巨大症に同じ

  1. 成長ホルモン(GH)分泌の過剰
    血中GH値がブドウ糖75g経口投与で正常域まで抑制されない
  2. 血中IGF-Ⅰの高値
  3. MRIまたはCTで下垂体腫瘍(腺腫)の所見を認める

 

Ⅳ.除外規定

脳性巨人症ほか他の原因による高身長例を除く

 

[診断基準]

確実例:ⅠとⅡのすべてを満たすもの。ただし、Ⅳ(除外規定)を満たす必要がある。

 

(注)年間成長速度が標準値の2SD以上。なお両親の身長、時代による平均値も参考とする。先端巨大は発育期には必ずしも顕著ではない。

間脳下垂体機能障害と先天性腎症尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版より一部抜粋

IGF-Ⅰが低値を示す例

 

Ⅰ. 主症候(注1)

  1. 成長障害があること
    通常は、身体のつりあいはとれていて、身長は標準身長(注1)の-2.0SD以下、あるいは身長が基準範囲であっても、成長速度が2年以上にわたって標準値(注2)の-1.5SD以下であること。但し、頭蓋内器質性疾患(注3)や他の下垂体ホルモン分泌不全がある場合は、成長速度の観察期間は2年未満でもよい(注4)
  2. 乳幼児で、低身長を認めない場合であっても、成長ホルモン分泌不全が原因と考えられる症候性低血糖がある場合
  3. 頭蓋内器質性疾患(注3)や他の下垂体ホルモン分泌不全がある場合

 

Ⅱ. 検査所見

GH分泌刺激試験(注5)として、インスリン負荷、アルギニン負荷、L-DOPA負荷、クロニジン負荷、グルカゴン負荷、またはGHRP-2負荷試験を行い、下記の値が得られること(注6~注8):インスリン負荷、アルギニン負荷、L-DOPA負荷、クロニジン負荷、またはグルカゴン負荷試験において、原則として負荷前および負荷後120分間(グルカゴン負荷では180分間)にわたり、30毎に測定した血清(血漿)中GH濃度の頂値が6ng/ml以下であること。GHRP-2負荷試験で、負荷前および負荷後60分にわたり、15分毎に測定した血清(血漿)GH頂値が16ng/ml以下であること。

 

Ⅲ. 参考所見

  1. 血中IGF-Ⅰ値が性別年齢標準値に比べ低値である。
  2. 骨年齢(注9)が暦年齢の80%以下である。
  3. 24時間あるいは夜間入眠後3~4時間にわたって20分毎に測定した血清(血漿)GH濃度の平均値が正常値に比べ低値である。
  4. 明らかな周産期障害がある。

 

[診断基準]

確実例:

  1. 主症候がⅠの1を満たし、かつⅡの2種類以上の分泌刺激試験において、検査所見を満たすもの。
  2. 主症候がⅠの2あるいは、Ⅰの1と3を満たし、Ⅱの1種類の分泌刺激試験において検査所見を満たすもの。

疑い例:

  1. 主症候がⅠの1または2を満たし、かつⅢの参考所見の4項目のうち3項目以上を満たすもの。
  2. 主症候がⅠの1を満たし、Ⅱの1種類の分泌刺激試験において検査所見を満たし、かつⅢの参考所見のうち2項目を満たすもの。
  3. 主症候がⅠの1と3を満たし、かつⅢの参考所見のうち2項目以上を満たすもの。

 

(注1)横断的資料に基づく日本人小児の性別・年齢別平均身長と標準偏差値を用いること。

(注2)縦断的資料に基づく日本人小児の性別・年齢別標準成長速度と標準偏差値を用いること。ただし、男児11歳以上、女児9歳以上では暦年齢を骨年齢に置き換えて判読すること。

(注3)頭蓋部の照射治療歴、頭蓋内の器質的障害、あるいは画像検査の異常所見(下垂体低形成、視認できない下垂体茎、偽後葉)が認められ、それらにより視床下部-下垂体機能障害が生じたと判断(診断)された場合。

(注4)6ヶ月~1年間の成長速度が標準値(注2)の-1.5SD以下で経過していることを目安とする。

(注5)正常者でも偽性低反応を示すことがあるので、確定診断のためには通常2種以上の分泌刺激試験を必要とする。但し、乳幼児で頻回の症候性低血糖発作のため、早急に成長ホルモン治療が必要と判断される場合等では、この限りでない。

(注6)次のような状態においては、GH分泌刺激試験において低反応を示すことがあるので注意を必要とする。

  1. 甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンによる適切な補充療法中に検査する。
  2. 中枢性尿崩症:DDAVPによる治療中に検査する。
  3. 性腺機能低下症
  4. GH分泌に影響を与える薬物(副腎皮質ホルモンなど)投与中:可能な限り投薬中止して検査する(ただし補充療法は除く)。
  5. 慢性的精神抑圧状態(愛情遮断症候群など)
  6. 肥満

 

(注7)二次性徴開始前の一定期間、成長速度が低下し、成長ホルモン分泌刺激試験に対する反応性が一過性に低下することがある。

(注8)現在のGH測定キットはリコンビナントGHに準拠した標準品を用いている。キットによりGH値が異なるため、公益財団法人成長科学協会のキット毎の補正式で補正したGH値で判定する。

(注9)Tanner-Whitehouse-2(TW2)法に基づいた日本人標準骨年齢を用いることが望ましいが、Greulich & Pyle法、TW2原法またはCASMAS(Computer Aided Skeletal Maturity Assessment System)法、BoneXpertでもよい。

 

Ⅰ. 主症候および既往歴

  1. 小児期発症では成長障害を伴う(注2)。
  2. 頭蓋内器質性疾患の合併ないし既往歴、治療歴(注3)または周産期異常の既往がある。

 

Ⅱ. 内分泌検査所見

  1. GH分泌刺激試験として、インスリン負荷、アルギニン負荷、グルカゴン負荷、またはGHRP-2負荷を行い(注4)、下記の値が得られること(注5、注6):
    1. インスリン負荷、アルギニン負荷、またはグルカゴン負荷において、負荷前および負荷後120分間(グルカゴン負荷では180分間)にわたり、30分ごとに測定した血清GHの頂値が3ng/ml以下である(注5、注6)。
    2. GHRP-2において、負荷前および負荷後60分にわたり、15分毎に測定した血清GH頂値が9ng/ml以下である(注5、注6、注7)。
  2. GHを含めて複数の下垂体ホルモンの分泌低下がある(注8)。

 

Ⅲ. 参考所見

血清(血漿)IGF-Ⅰ値が年齢および性を考慮した基準値に比べ低値である(注9)。

 

[診断基準]

成人成長ホルモン分泌不全症:

  1. Ⅰの1または2を満たし、かつⅡの1で2種類以上のGH分泌刺激試験において基準を満たすもの。
  2. Ⅰの2およびⅡの2を満たし、かつⅡの1で1種類のGH分泌刺激試験において基準を満たすもの。

 

(注2)適切なGH補充療法後や頭蓋咽頭腫の一部(growth without GH と呼ばれる)では成長障害を認めないことがある。また、性腺機能低下症の存在、それに対する治療の影響も考慮する。

(注3)頭蓋内の腫瘍[下垂体腫瘍(腺腫)、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、髄膜腫など]、炎症(多発血管炎肉芽腫など)、自己免疫(リンパ球性下垂体炎、抗PIT1下垂体炎(抗PIT1抗体症候群)など)、肉芽腫(サルコイドーシスなど)、感染(下垂体膿瘍、結核など)、嚢胞(ラトケ嚢胞、くも膜下嚢胞など)、血管障害(シーハン症候群など)などの器質性疾患、頭部外傷歴やくも膜下出血の既往、手術および放射線治療歴、小児がん経験者(視床下部下垂体系に影響のある病態や治療を受けた者)あるいは画像検査において視床下部下垂体系の異常所見が認められ、それらにより視床下部下垂体機能障害の合併が強く示唆された場合には積極的に疑いGH分泌刺激試験を行う。原因疾患によって画像検査では軽微な所見の場合がある。

(注4)重症成人GH分泌不全症が疑われる場合は、インスリン負荷試験またはGHRP-2負荷試験をまず試みる。インスリン負荷試験は虚血性心疾患や痙攣発作を持つ患者では禁忌である。追加検査としてアルギニン負荷あるいはグルカゴン負荷試験を行う。クロニジン負荷、L-DOPA負荷は偽性低反応を示すことがあり、GHRH負荷試験は視床下部障害や放射線療法後に偽性反応を示すことがあるため診断基準には含まれていない。

(注5)現在のGH測定キットはリコンビナントGHに準拠した標準品を用いている。キットによりGH値が異なるため、成長科学協会のキット毎の補正式で補正したGH値で判定する。

(注6)次のような状態においては、GH分泌刺激試験において低反応を示すことがあるので注意を必要とする。

甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンによる適切な補充療法中に検査する。

中枢性尿崩症:DDAVPによる治療中に検査する。

GH分泌に影響を与える下記のような薬剤投与中:可能な限り投薬中止して検査する。薬理量のグルココルチコイド、α-遮断薬、β-刺激薬、抗ドパミン作動薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗コリン作動薬、抗セロトニン作動薬、抗エストロゲン薬

高齢者、肥満者(アルギニン負荷、グルカゴン負荷試験の場合)、中枢神経疾患やうつ病に罹患した患者。特に高度肥満者では重症成人成長ホルモン分泌不全症の基準を満たす場合があるが、原因となりうる器質的疾患が明らかではない場合には治療の対象にはならない。

(注7)重症型以外の成人GH分泌不全症を診断できるGHRP-2負荷試験の血清(血漿)GH基準値はまだ定まっていない。

(注8)器質性疾患による複数の下垂体前葉ホルモン分泌障害を認める場合には、下垂体炎など自己免疫機序によるものを除いて、ほとんどの場合GH分泌が障害されている。

(注9)栄養障害、肝障害、コントロール不良な糖尿病、甲状腺機能低下症など他の原因による血中濃度の低下がありうる。IGF-Ⅰ値が正常範囲であっても本症を否定できない点に注意が必要である。

間脳下垂体機能障害と先天性腎症尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版より一部抜粋

監修:虎の門病院 小児科 部長 磯島 豪 先生