NSE(Neuron-specific enolase)は神経組織および神経内分泌細胞に特異的に存在する解糖系酵素であり、γサブユニットを有する二量体酵素です。健常成人における血中NSE量はごく微量ですが、小細胞肺癌や神経芽細胞腫などの神経内分泌系腫瘍は細胞の破壊を伴なうため、血中への逸脱により高値化します。
NSEはこれら疾患の診断および経過観察を目的として、血清検体を用いて測定されます。ただしNSEは赤血球中にも含まれるため、溶血検体は測定を避ける必要があります。
エクルーシス プレチコントロール TM、ヒトプール血清を用いた検討では、同時再現性、日差再現性ともに良好な結果が得られています。
(自社データ)
検体の保存条件としては、-80℃が検体安定性・測定再現性ともに良好であり推奨されます(文献5を改編)。一方、短時間の保存であれば、NSEの立体構造の変化による低値化を防ぐため、-20℃よりも冷蔵(4℃)保存が望ましいことが報告されています。
一方、CEA値は年齢、喫煙歴によって影響を受けることが報告されています。喫煙者のみ132例を用いた場合の参考基準範囲(95パーセンタイル値)は4.3 ng/mL以下でした。
参考資料・文献
エクルーシス試薬NSEはRIA法と良好な相関性を示しました。
参考資料・文献
採血から遠心処理までの経過時間によって、NSE値は有意に上昇します。採血後の微小な血球破壊が進行して血中にNSEが漏出しているためと推定されます。
健常人からの採血後、1時間以内に遠心処理した検体の参考基準範囲は12.0 ng/mL以下、2時間以内の場合の参考基準範囲は16.3 ng/mL以下を示しました。
18歳までの未成年につき、各年代毎に基準範囲(95パーセンタイル上限値)を求めたところ、生後3日後までにおいて44.5ng/mLと最も高く、以降徐々に低下する傾向を示しました。
(自社データ)
小細胞肺癌188例、健常者257例、非小細胞肺癌374例、良性肺疾患183例の血清検体を用いて各疾患毎のNSE測定値分布を調べました。
小細胞肺癌において、血清NSE測定値は病期が進行するほど高値化する傾向を示しました。
(自社データ)
各種腫瘍マーカーについて、小細胞肺癌115例を疾患群、肺良性疾患98例を対照群としたROC曲線を作成しました。 AUC(曲線下面積)0.90を示し、また特異度95%におけるカットオフ値は22 ng/mL、感度72%であり、優れた疾患識別能を示しました。
(自社データ)
NSEは赤血球・血小板・リンパ球などの血球中にも含まれるため、溶血により上昇することが報告されています。採血後、遠心分離は1時間以内に行ってください。
ガストリン放出ペプチド前駆体(ProGRP)を神経特異エノラーゼ(NSE)と併せて実施した場合には、主たるもののみ算定する