エクルーシス試薬 ProGRP
ProGRP(Pro-gastrin-releasing peptide)は、消化管ホルモンあるいは神経ペプチドであるGRP(gastrin-releasing peptide)の前駆体です。GRPは小細胞肺癌(SCLC)の増殖因子として働いていることが報告されていますが、血中半減期が短い(約2分)ため、診断に利用されることはありませんでした。
ProGRPは、GRPに比べて血中半減期が長く、また、小細胞肺癌への特異的が高い、早期の小細胞肺癌でも陽性例が多い、病状の進行状態をより的確に反映するなどの特徴があります。このため、 ProGRPは小細胞肺癌の組織型鑑別や経過観察を目的として、広く日常診療に利用されています。
特徴
- トロンビンによるProGRP切断部位とは異なる配列を認識する抗体を採用
- 血清検体でのProGRPの安定的測定と最適カットオフ値 81 pg/mLを実現
- 18分の短時間測定
- 広範囲を精度よく測定可能:3~5000 pg/mL
- 微量検体での測定を実現:e 801:1テスト18 μL(e 411/E170/e 601/e 602:30 μL)
- 開封後、機器上安定性:e 801:16週間(e 411/E170/e 601/e 602: 6週間)
再現性
エクルーシス プレチコントロール TM、ヒトプール血清を用いた検討では、同時再現性、日差再現性ともに良好な結果が得られています。


(医学と薬学 第72巻 第7号 2015年)
参考基準範囲
健常者698例により参考基準範囲(対数変換後の平均値+1.96SD)を求めたところ、血清・血漿検体共に、74.7 pg/mL以下となりました。

参考資料・文献
- 前川 他:医学と薬学 vol 71 no. 9, 1643-1653, 2014
血漿検体を用いたときの他法との相関性
エクルーシス試薬ProGRPはCLIA法と良好な相関性を示しました。

(自社データ)
小細胞肺癌におけるROC曲線
各種腫瘍マーカーについて、肺小細胞癌175例を疾患群、非小細胞肺癌472例を対照群としたROC曲線を作成しました。ProGRPはAUC(曲線下面積)0.85、NSEは0.82を示し、共に、肺小細胞癌に対して優れた診断能を示しました。

参考資料・文献
- Molina et al.,: Anticancer Res. vol. 25, no.3a: 1773-1778, 2005
- Molina et al.,: Tumor Biol. vol 30: 121–129, 2009
ProGRPとNSEの相関性
ProGRPとNSEの相関性は乏しく(r = 0.32)、小細胞肺癌に対して互いに相補性を示します。このため、同時測定により小細胞肺癌の臨床的感度が14%-23%向上することが報告されています。

参考資料・文献
- 前立腺癌診療ガイドライン 2012年版、日本泌尿器科学会編
- 栗山学,他: 検査と技術 vol.27 no.9: 1073-1076, 1999
血清中でのProGRPの安定性
血清中トロンビンによるProGRP分子切断部位とは異なる配列を認識する抗体を採用した結果、血清検体での良好な安定性を実現できました。
- * 血清中ではセリンプロテアーゼの一種であるトロンビンが活性化され、ProGRPのアミノ酸配列78番目で分解することが報告されています。
- ** 本製品の構成試薬の一部(ProGRP抗原及び抗体)は、Fujirebio Diagnostics, Inc.より実施許諾を受けています。

参考資料・文献
- Korse et al.,: Clinica Chimica Acta vol 438, 388-395, 2015
診断カットオフ値81pg/mLを用いたときの小細胞肺癌の感度・特異度(血清検体)
- 非小細胞肺癌(NSCLC, 853例)を対照としたときの小細胞肺癌(SCLC, 206例)の感度は78%を示した。
- 肺良性疾患(100例)を対照としたときの小細胞肺癌(SCLC, 206例)の感度は78%を示した。
SCLC vs NSCLC + 肺良性疾患
特異度95%としたときの最適カットオフ値は80.8 pg/mL(AUC:0.900, 95% Cl:0.886-0.941)を示した。
SCLC vs NSCLC
特異度95%としたときの最適カットオフ値は80.1 pg/mL(AUC:0.898, 95% Cl:0.868-0.928)を示した。
SCLC vs 肺良性疾患
特異度95%としたときの最適カットオフ値は80.8 pg/mL(AUC:0.913, 95% Cl:0.882-0.943)を示した。
血清検体を用いたときの各疾患群のProGRP分布

(The 16th World Conference on Lung Cancer, 2015, Presentation #1390)
ガストリン放出ペプチド前駆体(ProGRP)を神経特異エノラーゼ(NSE)と併せて実施した場合には、主たるもののみ算定する