質量分析検査
質量分析をもっと手軽に、もっと身近に。日常検査のスタンダードへ。
検査サービスの拡充で、より良い患者ケアに貢献
免疫化学測定法や臨床化学検査法など、従来の標準的な検査法には、測定における一定の限界が見られます。2 一方、質量分析技術は、特定の検体において、より高い分析感度・特異性・正確性を示し、かつマトリックス効果や干渉、交差反応などの影響を受けにくいという特性を持っています。3,4,5
この特性により、質量分析は既存の検査法を効果的に補完し、検査室が提供できるサービスの幅を広げます。そして、これまで対応が難しかった新たな患者群や症例に対しても、より高い臨床的価値を提供することに繋がるのです。6
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『複雑で使いにくい』質量分析の壁
質量分析は多くの利点を持つ一方で、その導入や運用には依然として課題があります。実際に、ノンユーザーの66%が、操作の複雑さ、システム統合の難しさ、自動化・標準化の遅れ、専門知識やトレーニングの必要性といった理由から、質量分析は日常的な検査には適していないと感じています。7
ロシュは、こうした課題を克服し、質量分析検査のあり方を根本から変革することに取り組んでいます。これにより、より多くの医療現場で高度な診断技術を利用可能にし、最終的には患者様の利益に貢献することを目指しています。
私たちの最終的な目標は、質量分析検査を、現在の臨床化学検査や免疫測定法と同じくらい手軽に、誰もが扱える検査へと進化させることです。
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革新的な技術で 質量分析は新たな次元へ
ロシュは、イノベーションを通じて診断を絶えず進化させ、その価値を高めることを追求しています。当社はこれまで、臨床検査の分野で数々の先駆的なソリューションを提供してきた実績を有しており、今後も継続的な技術革新に積極的に取り組んでまいります。
今日のヘルスケアを取り巻く環境は大きく変化しており、臨床検査室は、増え続ける検体をより迅速かつ高い精度で処理し、タイムリーに結果を報告しなければならないという課題に直面しています。質量分析検査は、特定の臨床場面においてはゴールドスタンダードとされ、従来よりもはるかに多くの情報を迅速に臨床医へ提供できる可能性を秘めています。1 しかしながら、その技術的な複雑さから、多くの中央検査室ではまだ十分に活用されているとは言えません。
こうした現場のニーズや課題に応えるため、ロシュは質量分析検査プロセス全体をカバーする、エンドツーエンド・ソリューションの開発を進めてきました。その中核となるコバス i 601 分析装置は、フルオートメーション、システム統合、標準化、そして簡便な操作性を追求し、高い処理能力とランダムアクセスを実現するソリューションです。本装置は、当社のコバス pro 統合ソリューションと連携して稼働します。さらに、Ionify pack (i pack)ラインが既存の血清ワークエリア(SWA)の検査メニューを拡充し、navify デジタルソリューションが検査室全体のオペレーションにおける透明性と管理性を高めます。
このように検査室のワークフロー全体を効率化・標準化することで、患者さんの検査プロセスを迅速化し、常に安定した結果を提供することが可能になります。これは、検査室が抱える業務負担の軽減にも貢献します。
臨床活用における質量分析座談会
千葉大学の野村文夫教授を司会に迎え、慶應義塾大学の涌井昌俊先生、東北大学の前川正充先生、LSIメディエンスの宮澤貴磨呂室長が参加する質量分析に関する座談会が開催されました。質量分析が微生物同定(MALDI-TOF)では広く普及し、病院検査室において不可欠な技術となりつつある一方、臨床化学や治療薬モニタリング(TDM)といったその他の領域ではまだ普及が十分に進んでいない現状について議論が行われました。
また質量分析の高い精度と有用性について意見を交わし、教育や専門家の育成、認知度向上、簡便性の向上、迅速なターンアラウンドタイム(TAT)、信頼性、メンテナンスの容易さといった課題について意見交換されました。今回の座談会は、臨床現場で質量分析の活用を広げるための多様な視点を浮き彫りにしました。
参考文献
- Rankin-Turner S and Heaney LM. Mass spectrometry in the clinical laboratory. A short journey through the contribution to the scientific literature by CCLM. Clin Chem Lab Med. 2023; 61(5): 873-879.
- Vogeser V and Zhang YV. Understanding the strategic landscape surrounding the implementation of mass spectrometry in the clinical laboratory: A SWOT analysis. Clin Mass Spectrom. 2018 Aug;9:1-6.
- D'Aurizio F and Cantù M. Clinical endocrinology and hormones quantitation: the increasing role of mass spectrometry. Minerva Endocrinol. 2018 Sep;43:261-284.
- Keevil BG. LC-MS/MS the First 20 years: A Personal View. Annals of Clinical Biochemistry. 2022 Jan;59(1):3–6.
- Van der Gugten JG. Tandem mass spectrometry in the clinical laboratory: A tutorial overview. Clin Mass Spectrom. 2020 Jan;15:36–43.
- Thomas SN et al. Liquid chromatography-tandem mass spectrometry for clinical diagnostics. Nat Rev Methods Primers. 2022 Dec 8;2(1):96.
- Business potential of clinical Mass Spectrometry, usage of CMS in Seven target countries. Study number 40846131.