HCVは1989年に発見され*8、フラビウイルス科に属しポリプロテインをコードする1つの読み取り枠(Open Reading Frame : ORF)を持つプラスの一本鎖RNAウイルスです。増殖時、このポリプロテインはウイルスおよび宿主の酵素によって構造タンパクと非構造タンパクに分割され、RNA複製とウイルス体躯の組立てが行われます*7*8*9(図1)。ORFは構造タンパク(コア【C】、エンベロープ1、2【E1、E2】)と非構造タンパク(p7、NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、NS5B)をコードしています*10。
HCVのジェノタイプとサブタイプは非常に複雑です。また、HCVはRNAの修復機能がないため、非常に変異しやすいウイルスです。
参考資料・文献
世界の感染者数は約1.2億人で世界人口の2-2.5%を占め、そのうちの8,000万人がHCV RNA陽性といわれています。アフリカ、東地中海、アジアで感染率が高くなっています*11*12(図2)。また、地域ごとに主なジェノタイプは異なります*13(表1)。
感染経路は輸血、臓器移植、薬物注射針の共用などです。針刺し事故、母子感染や性感染の感染リスクはHBVよりも低いと考えられています*9*11。
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HCVが感染すると、急性および慢性肝疾患を引き起こすことがあります。おおよそ70-85%が慢性肝炎に移行しますが、これは患者の性別、年齢、人種及び免疫状態によって異なります*7*9。急性肝炎では平均潜伏期間は7週間です。約80%の患者は無症候ですが、残りの患者についてもHCV特有の症状はなく、HAVやHBVに感染した場合と同様に黄疸などが数週間ほどみられることがあります。また、ジェノタイプ3はジェノタイプ1よりも完治する可能性が高くなっています*7*9。慢性C型肝炎の患者では急性C型肝炎の患者より症状を示す可能性ははるかに低いものの、長い期間を経て肝硬変、末期肝疾患および肝細胞がん(HCC)に移行する可能性があります。慢性C型肝炎の場合、進行のスピードには個人差があり、各患者について予後を判断するのは困難です。これは遺伝的または環境的要因によると考えられています。
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正確な診断による患者マネジメント
C 型肝炎ウイルス(HCV)感染およびその臨床病期は、種々のHCV検査の組み合わせによって診断されます。
また、ALT検査は、肝疾患の診断や肝臓障害のスクリーニングに使用します*7*14。
ロシュは、HCV感染の診断と慢性C型肝炎のマネジメントのための重要な検査のプラットフォームシステムを提供します。
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信頼できる一貫した結果を治療方針決定のために
HCV感染の有無は、血清中のHCV RNA(PCR)、ALTおよびHCV 特異抗体(Anti-HCV)を用いて診断します。これらは急性肝炎か慢性肝炎かについても知ることができます*7。
HCV抗体検査は、HCVに対する抗体の存在を確認する検査です。HCV感染では、HCV抗体のウィンドウピリオド(HCV抗体陰性、HCV RNA陽性)が、40~60日にもなることがあります(HIVの場合は22日前後)*7。HCV抗体は感染してから平均6~8週で検出することができます*14。
効果的な患者マネジメントのための高感度検査
参考資料・文献
HCV抗体検査は、HCVに感染した後、ウイルスが排除された患者においても陽性の結果を示します。したがって、HCV の感染状況の確認と状態を把握するためにはHCV RNA検査が必要です*15。また、HCV RNA検査は、曝露から抗体陽性になるセロコンバージョンまでのウィンドウピリオドにも有効です。
PCRによるHCV RNA検査は、慢性C型肝炎のウイルスを高感度かつ特異的に検出します。HCV抗体検査とHCV RNA検査を組み合わせて用いることにより、HCVによる疾患状態を正確に分類することができます。
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Direct-Acting Antivirals(DAAs:直接型抗ウイルス薬)時代の重要な評価ツール
最適な治療結果を得るために、定期的にHCVウイルス量を評価し、治療法を決定します。
HCV RNA定量検査は以下を可能にします。
治療効果のモニタリングでは、測定範囲が広くかつ高感度(検出感度≤15IU/mL)で正確なHCV RNA定量検査を繰り返し測定します。治療の終了(ウイルス学的著効:SVR)は、投薬終了の12または24週間後においてもHCV RNAが検出されないこと、と定義されます*17*18。
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