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C型肝炎 Hepatitis C



C型肝炎ウイルス(HCV)

HCVは1989年に発見され*8、フラビウイルス科に属しポリプロテインをコードする1つの読み取り枠(Open Reading Frame : ORF)を持つプラスの一本鎖RNAウイルスです。増殖時、このポリプロテインはウイルスおよび宿主の酵素によって構造タンパクと非構造タンパクに分割され、RNA複製とウイルス体躯の組立てが行われます*7*8*9(図1)。ORFは構造タンパク(コア【C】、エンベロープ1、2【E1、E2】)と非構造タンパク(p7、NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、NS5B)をコードしています*10

HCVのジェノタイプとサブタイプは非常に複雑です。また、HCVはRNAの修復機能がないため、非常に変異しやすいウイルスです。

C型肝炎ウイルス(HCV)

参考資料・文献

  • *7Hoofnagle, J.H. (2002). Course and outcome of hepatitis C. Hepatology 36, S21-S29.
  • *8Choo, Q.L., et al. (1989). Isolation of a cDNA clone derived from a blood-borne non-A, non-B viral hepatitis genome. Science 244, 359-362.
  • *9Howley, P.M., Knipe, D.M., Lemon, S.M. et al. (2007). Hepatitis C virus. Field’s Virology (Eds), 5th Edition, Lippincourt Williams and Wilkins, Philadelphia, 1253-1304.
  • *10Bukh, J., Miller, R.H., Purcell, R.H.(1995). Genetic Heterogeneity of Hepatitis C virus: Ouasispecies and Genotypes, Seminars in Liver Disease-Vol. 15, No.1.



疫学

世界の感染者数は約1.2億人で世界人口の2-2.5%を占め、そのうちの8,000万人がHCV RNA陽性といわれています。アフリカ、東地中海、アジアで感染率が高くなっています*11*12(図2)。また、地域ごとに主なジェノタイプは異なります*13(表1)。

図2:各地におけるHCV感染率
表1:各地におけるHCVの主なジェノタイプ

感染経路は輸血、臓器移植、薬物注射針の共用などです。針刺し事故、母子感染や性感染の感染リスクはHBVよりも低いと考えられています*9*11

参考資料・文献

  • *11Lavanchy, D. (2009). The global burden of hepatitis C. Liver Int 29(Suppl1), 74-81.
  • *12Hepatitis C. (2003). WHO report WHO/SCD/SCR/LYO/2003. Available from: http://www.who.int/csr/disease/hepatitis/whocdscsrlyo2003/en/index3.html (Accessed June 2014).
  • *13Gower, E., Estes, C., Blach, S., Razavi-Shearer, K., Razavi, H. (2014). Global epidemiology and genotype distribution of the hepatitis C virus infection. Journal of Hepatology, doi: 10.1016/j.jhep.2014.07.027.



自然経過

HCVが感染すると、急性および慢性肝疾患を引き起こすことがあります。おおよそ70-85%が慢性肝炎に移行しますが、これは患者の性別、年齢、人種及び免疫状態によって異なります*7*9。急性肝炎では平均潜伏期間は7週間です。約80%の患者は無症候ですが、残りの患者についてもHCV特有の症状はなく、HAVやHBVに感染した場合と同様に黄疸などが数週間ほどみられることがあります。また、ジェノタイプ3はジェノタイプ1よりも完治する可能性が高くなっています*7*9。慢性C型肝炎の患者では急性C型肝炎の患者より症状を示す可能性ははるかに低いものの、長い期間を経て肝硬変、末期肝疾患および肝細胞がん(HCC)に移行する可能性があります。慢性C型肝炎の場合、進行のスピードには個人差があり、各患者について予後を判断するのは困難です。これは遺伝的または環境的要因によると考えられています。

参考資料・文献

  • *7Hoofnagle, J.H. (2002). Course and outcome of hepatitis C. Hepatology 36, S21-S29.
  • *9Howley, P.M., Knipe, D.M., Lemon, S.M. et al. (2007). Hepatitis C virus. Field’s Virology (Eds), 5th Edition, Lippincourt Williams and Wilkins, Philadelphia, 1253-1304.

HCV感染患者の適切な診断と治療マネジメント

正確な診断による患者マネジメント



HCVの診断と治療マネジメントのための検査の組み合わせ

C 型肝炎ウイルス(HCV)感染およびその臨床病期は、種々のHCV検査の組み合わせによって診断されます。

  • HCV抗体:
    スクリーニングのファーストライン検査、HCV感染を診断します。HCV感染をスクリーニングするための第一選択検査です。
  • HCV RNA:
    ウイルスが存在するか否かの確認、抗ウイルス治療前、治療中および治療後のウイルス動態のモニタリングに使用します。
  • HCV遺伝子型判定:
    適切な治療を選択するため、ジェノタイプやセロタイプを判定します*7

また、ALT検査は、肝疾患の診断や肝臓障害のスクリーニングに使用します*7*14

ロシュは、HCV感染の診断と慢性C型肝炎のマネジメントのための重要な検査のプラットフォームシステムを提供します。



C型肝炎ウイルスの診断の流れ

図3:HCV感染の診断とモニタリングにおける重要なステップ

参考資料・文献

  • *7Hoofnagle, J.H. (2002). Course and outcome of hepatitis C. Hepatology 36, S21-S29.
  • *14Laperche, S. Antigen-antibody combination assays for blood donor screening: weighing the advantages and costs. Transfusion 48, 576-579, doi:10.1111/j.1537-2995.2008.01676.x (2008).

正確な診断のためのエクルーシス® Anti-HCV II

信頼できる一貫した結果を治療方針決定のために

HCV感染の有無は、血清中のHCV RNA(PCR)、ALTおよびHCV 特異抗体(Anti-HCV)を用いて診断します。これらは急性肝炎か慢性肝炎かについても知ることができます*7

図4:急性C型肝炎のマーカーの動態7)
図5:慢性C型肝炎のマーカーの動態7)

HCV抗体検査は、HCVに対する抗体の存在を確認する検査です。HCV感染では、HCV抗体のウィンドウピリオド(HCV抗体陰性、HCV RNA陽性)が、40~60日にもなることがあります(HIVの場合は22日前後)*7。HCV抗体は感染してから平均6~8週で検出することができます*14

HCV RNA検査による確認

効果的な患者マネジメントのための高感度検査

参考資料・文献

  • *7Hoofnagle, J.H. (2002). Course and outcome of hepatitis C. Hepatology 36, S21-S29.
  • *14Laperche, S. Antigen-antibody combination assays for blood donor screening: weighing the advantages and costs. Transfusion 48, 576-579, doi:10.1111/j.1537-2995.2008.01676.x (2008).



適切な患者マネジメントに極めて重要なHCV RNA検査

HCV抗体検査は、HCVに感染した後、ウイルスが排除された患者においても陽性の結果を示します。したがって、HCV の感染状況の確認と状態を把握するためにはHCV RNA検査が必要です*15。また、HCV RNA検査は、曝露から抗体陽性になるセロコンバージョンまでのウィンドウピリオドにも有効です。

表2:HCVの検査結果の解釈

PCRによるHCV RNA検査は、慢性C型肝炎のウイルスを高感度かつ特異的に検出します。HCV抗体検査とHCV RNA検査を組み合わせて用いることにより、HCVによる疾患状態を正確に分類することができます。

図6:CSC推奨検査手順16)

参考資料・文献

  • *15Getchell, J.P., et al. (2013). Testing for HCV Infection: An Update of Guidance for Clinicians and Laboratorians. Morbidity and Mortality Weekly Report, Vol. 62(18), 362–65.
  • *16CDC. Testing for HCV infection: An update of guidance for clinicians and laboratorians. MMWR 2013; 62 (18).

HCV RNA検査の価値

Direct-Acting Antivirals(DAAs:直接型抗ウイルス薬)時代の重要な評価ツール



HCV RNA定量検査によるHCV治療の効果的なマネジメント

最適な治療結果を得るために、定期的にHCVウイルス量を評価し、治療法を決定します。

HCV RNA定量検査は以下を可能にします。

  • 治療に反応したウイルス抑制の評価
  • 治療の遵守または不遵守の識別
  • 治療に無反応な患者の検出
  • 治療終了時、ブレイクスルーと再燃の区別

治療効果のモニタリングでは、測定範囲が広くかつ高感度(検出感度≤15IU/mL)で正確なHCV RNA定量検査を繰り返し測定します。治療の終了(ウイルス学的著効:SVR)は、投薬終了の12または24週間後においてもHCV RNAが検出されないこと、と定義されます*17*18

【海外におけるHCV RNA定量検査の推奨例】表3:EASLガイドライン2015による推奨ウイルス量検査ポイント17)

参考資料・文献

  • *17EASL Recommendations on Treatment of Hepatitis C 2015. Journal of Hepatology. 2015 vol. 63; 199–236
  • *18American Association for the Study of Liver Diseases (AASLD) (2014). Recommendations for testing, managing and treating hepatitis C.