ヒトT細胞白血病ウイルス-I型/II型(HTLV-I/II)はCD4陽性T細胞(HTLV-Iの場合)もしくはCD8陽性T細胞(HTLV-IIの場合)に感染するレトロウイルスです。これらのウイルスは母親から乳幼児への授乳、性行為、注射針の使いまわしや汚染された血液製剤などを介して感染します。注射型の薬物の使用や二次的な性行為などを通して、HTLV-I/IIが献血に混入することがあります。
HTLV-Iは臨床的にも重要であり、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)、HTLV関連脊髄症(HAM)/熱帯性痙性対麻痺 (Tropical spastic paraparesis, TSP)、ぶどう膜炎(Uveitis)や感染性の皮膚炎を引き起こすことがあります。この中では特にATLLとHAM/TSPが重篤となりえる疾病です。ATLLは極めて進行性の高く予後も劣悪なT細胞悪性腫瘍で、HTLV-I感染者の5%に発症すると言われています。HAM/TSPは慢性の痙性脊髄麻痺のことで、HTLV-I感染者の3%に発病すると言われています。