CMV感染症は造血細胞移植後・臓器移植後の免疫抑制下において最も多い感染症の一つであり、患者の生命予後に影響するため、移植後に定期的なCMV感染症の検査を実施することが重要です。
サイトメガロウイルス(CMV)は、ヘルペスウイルス科に属する、直径約200~230nm、ゲノムサイズ236kbpからなる2本鎖DNAウイルス※1。ヒトヘルペスウイルス5型(human herpesvirus-5;HHV-5)とも呼ばれる。
ウイルスの中心部にあるDNAはカプシドに囲まれ,さらにその外側にはテグメントがあり、それを囲む最も外側にあるエンベロープには糖蛋白の突起が存在している。
※1 Fields Virology sixth edition 2013
CMV感染は、CMV感染症の前段階にありますが、CMV感染がすべてCMV感染症に移行するわけではありません。
CMVは、多くの場合、幼少期に感染し、初感染後、潜伏感染のかたちで終生、体内に存在します。(体内のどこに潜伏感染するかははっきりとは同定されていません。
また、慢性感染でずっと残存することはありません)臓器移植の場合は移植片とともにレシピエントに伝播する場合、また、もともとレシピエントの体内に潜伏しているCMVが何らか誘引によって再活性化する場合があります。
臓器移植においては同種免疫反応と免疫抑制の両方が関与しているためCMVの再活性化が起こりやすい状態にあります。
ドナー・レシピエントのCMV抗体陽性はCMV再活性化のリスク因子の1つです。
CMVは一度感染すると終生体内に存在するため、感染者はIgG抗体陽性となります。ドナー・レシピエントのCMV抗体陽性は、CMV再活性化のリスクとなるため、CMV再活性化のリスク評価のために、ドナーとレシピエントの抗IgG抗体の測定が推奨されています。
【臓器移植の例】 D+/R- > D+/R+ > D-/R+ > D-/R-
診断の際にはCMVの活動性感染をウイルス学的に証明することが必要です。
実臨床の場では現在 CMV抗原血症検査(アンチゲネミア法:AG法)が主流ですが、2020年8月に標準化定量PCR法が保険適用になって以降徐々にPCR法へ移行が進んでいます。
CMVpp65抗原に対するモノクローナル抗体を用いて、末梢血中のCMV抗原陽性細胞(多形核白血球)を検出する方法。結果を抗原陽性細胞数で定量的に表現する。
検体中のCMV DNAをリアルタイムPCR法により増幅し定量する方法。感度が高く、特異性に加えて迅速性もある。一般的には血漿が検体として用いられる。
アンチゲネミア法 | 定量PCR法 | |
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検出対象 | 白血球中のpp65抗原
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血漿中のウイルスDNA
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測定方法 | pp65抗原陽性白血球を顕微鏡下で目視確認/カウント
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全自動リアルタイムPCR法により定量
|
測定結果 | 一定量の白血球数あたりの陽性細胞数を報告
|
国内外のガイドラインに準拠した単位 IU/mLで報告
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2法を比較したところ概ね良好な一致率を示しました。
※製造販売承認番号:30200EZX00001000
アンチゲネミア法 | ||||
陽性 | 陰性 | 計 | ||
PCR法 | 陽性相当 (定量値あり) | 342 | 196 | 538 |
陰性相当 (<34.5, TND) | 49 | 1,349 | 1,398 | |
計 | 391 | 1,545 | 1,936 |
社内データ
アンチゲネミア法 | ||||
陽性 | 陰性 | 計 | ||
PCR法 | 陽性相当 (定量値あり, >34.5) | 378 | 477 | 855 |
陰性相当 (TND) | 13 | 1,068 | 1,081 | |
計 | 391 | 1,545 | 1,936 |
社内データ
アンチゲネミア法の主なカットオフ値とそれぞれの値に相当する定量PCR法の測定値を国内臨床試験結果から算出しました。
アンチゲネミア法の測定値に対するPCR法の測定値の分布範囲は下図のようになりました。
従来のアンチゲネミア法の陽性細胞数の増加に伴い定量PCR法の測定結果の中央値が上昇する傾向が見られます。
監修:愛媛大学大学院医学系研究科 血液・免疫・感染症内科学教授 竹中克斗 先生