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婦人科診療におけるTV/MG検査のQandA

※こちらの内容は2023年9月19日に開催されたコバスTV/MGウェブセミナーにて三鴨先生に解説頂きました内容を編集したものになります。

Q4. 自由診療を前提とした場合の、CT/NG検査との同時検査の意義について教えてください。

Q5. マイコプラズマ・ジェニタリウムの治療について具体的に何をどう処方して、治療後いつ再検査して確認すればいいのでしょうか?

Q6. 外来診療でのTV/MG検査の使い方について教えてください。

Q7. マイコプラズマ・ジェニタリウムのマクロライド耐性の症例が多く、実際にキノロン耐性も増えているので治せないのではないのでしょうか?そうなると検査で調べても無駄なのではないでしょうか?

Q8. マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症を治療しない場合の後遺症について教えてください。

Q9. 保険診療においてCT/NGと同時にTV/MG検査を実施してもよいのでしょうか。

Q10. 保険診療においてはどのような傷病名や保険名を記載すればよろしいでしょうか。

Q11. 臨床ではTV/MGは細菌性腟症やクラミジアと同時感染も見受けられますが、社保ではSM培養で陰性ならTV/MG検査もしていいですよと言われ、SM培養とTVMGの同時検査の場合、当院では保険を切られてしまいます。検査を2回に分けて行ってくださいとのことですが、実際そのために患者はわざわざ行う人はおらずメリットが感じられません。保険制度の見直しも必要かと思いますが、いかがでしょうか。

Q12. マイコプラズマ・ジェニタリウムだけではなく、ウレアプラズマについての検査の意義が気になります。ウレアプラズマ感染の婦人科領域における取り扱いについて教えてください。

※ TV:トリコモナス、MG:マイコプラズマ・ジェニタリウム、CT:クラミジア・トラコマチス、NG:淋菌

Q1. TV/MGの検査をすべき臨床症状やタイミングについて教えてください(トリコモナスを疑う場合)

 

泡沫状帯下、泡のような帯下があって、トリコモナスを疑うのに、鏡検もトリコモナス培地も陰性だという時には、私はトリコモナスの遺伝子検査をした方がいいと思います。

基本的には性感染症学会のフローチャートを見ていただくとCT/NGの検査をして陰性だったら、TV/MGの検査実施と記載がありますが、このTV検査が感度が高いことを考えると、最初からTVを疑う、泡沫状の帯下症状があるというときにはTV/MG検査を実施しても良いと思います(保険審査の先生ともご相談ください)。

Q2. TV/MGの検査をすべき臨床症状やタイミングについて教えてください(マイコプラズマ・ジェニタリウムを疑う場合)

 

マイコプラズマ・ジェリタリウム(MG)に関しては実は難しいです。何かを疑う所見とか、自覚症状というのは3割ぐらいしかありません。あとの7割は症状がないんですよね。

症状がある人の中には例えば帯下の異常があるという方がいらっしゃいます。帯下の異常がある人では初めに検査するのは、やはりクラミジア、淋菌の検査です。クラミジア、淋菌の同時検査をして陰性だったら、次にマイコプラズマ・ジェニタリウムの検査をしましょうというのは当然の流れだと思います。しかし、もう一つ考えられるのは、クラミジア陰性、淋菌陰性ということで紹介されてきた患者さんは初診でもマイコプラズマ・ジェニタリウム、このTV/MG検査をすればいいと思うんですよね。

マイコプラズマ・ジェニタリウムでは症状は乏しいものの、帯下が黄色膿性の帯下が多い。あるいは私のイメージでは、教科書では漿液性の帯下もあると書いてありますが、漿液性の帯下は少ないと思います。漿液性の帯下は、やはりクラミジアが多いです。漿液性というよりは膿のような感じではないが膿性に近い時にマイコプラズマ・ジェニタリウムを疑うということでいいと思います。

Q3. TV検査は鏡検で十分ではないでしょうか?TV培地と核酸検出ではどれくらい感度が異なりますか

 

鏡検の判断率は見る方の能力も関係しますし、その時採取した分泌物にも影響し、そこに原虫がいるかどうかによっても違ってきます。文献によれば、3割~5割しか検査できないだろうという記載もあり、私は実は3割程度しか鏡検ではTVは検査できないのではないかと思っています。

なぜそんなことを言うかというと、実はトリコモナス培地は私がある会社の研究者と一緒に開発したものですが、鏡検と比べると、約2~3割ぐらい検出率が上がりました。例えば鏡検で3割ぐらい検出できていたものがトリコモナス培地を使うと、約6割ぐらい検出できるというイメージです。でも、それでは6割しか拾えてないんですね。逆にいうとあとの4割は拾えていないんです。でも、これを遺伝子検査では検出できます。トリコモナスというのは腟の中にもいますし、あるいは直腸の中にもいます。

今トリコモナスの治療の原則は内服薬です。いわゆる、メトロニダゾールの腟錠でなく、内服薬で治療するというのが基本です。きちんと診断してきちんと治療することで、再発も防げるということになります。ですから私はやはりトリコモナスの遺伝子診断は極めて意義が高いと思います。

 

Q4. 自由診療を前提とした場合の、CT/NG検査との同時検査の意義について教えてください。

 

ガイドラインでは、基本的にCT/NGをまず否定し、その後マイコプラズマ・ジェニタリウムとTVの検査をしてくださいとガイドライン上は記載してあります。私はその方向性でいいと思います。

なぜかというと、クラミジア・トラコマチスは卵管炎あるいは骨盤腹膜炎を起こす可能性もありますし、淋菌にいたっては骨盤腹膜炎はクラミジアより起こしやすいので、やはりCT/NG検査は実施した方がいい。しかし、私達の研究によれば、マイコプラズマ・ジェニタリウムはそこまでクラミジア、淋菌ほど骨盤腹膜炎に至る症例は多くないので、ある程度時間的余裕はあるということになると思います。ですから、基本的に保険診療の中でそのようなシークエンシャルな検査として実施する形でいいのではないかと個人的には思っています。ただ、大変症状が強く、この患者さんには調べた方が良いという時には、その両方を自費で検査するのはありだと思います。

現在自費で検査されているいわゆるコマーシャルセックスワーカーの方々に対してきちっとインフォームドコンセントを得てTV/MG検査を加えていくというのが、一つの方法としてあるかもしれませんね。

Q5. マイコプラズマ・ジェニタリウムの治療について具体的に何をどう処方して、治療後いつ再検査して確認すればいいのでしょうか?耐性が多いらしいのですが、第2、第3までのお薬を教えてください。

 

マイコプラズマ・ジェ二タリウムの治療の第1選択薬は基本的にはドキシサイクリンでよろしいと思います。

シタフロキサシンを第1に使いたいと思われる方がいらっしゃいますが、基本的には薬剤耐性が多いので、まずはガイドライン通りドキシサイクリンで治療しましょう。200mgを1週間から2週間。(私は実は2週間治療します)1日200mgを1週間から2週間治療する形でいいと思います。テトラサイクリン系の薬を飲むと、気持ち悪いとか嘔気を訴えられる方が実際はいらっしゃいます。ですから、本当はドキシサイクリンを1週間として、副作用がないことを確認して、さらに追加で1週間投与するというのが、ファーストラインとしてはいいと思います。

その後いつ治癒確認の検査をするのかと言うと、ガイドラインでは1週間から2週間後と記載してありますが、私は女性の場合は2週間後に検査をするというのが一番妥当だと思います。その治療を実施しても陽性が継続した場合はどうするのかということになりますね。次はシタフロキサシンという治療薬を使えばいいと思います。

シタフロキサシンは1日200mg使えばいいのですが、1錠50mgなので、4錠、分2ということになります。シタフロキサシンは非常に腸内細菌を乱しやすいお薬です。ほとんどの場合下痢が起こりますので、整腸剤を併用された方がいいと思います。1週間から2週間治療をして、その2週間後にもう一度、このTV/MGで検査をしていくというのが良いと思います。

その治療をしても陽性が続く場合については、ここはまだガイドライン等では述べられていませんが、世界のエキスパートオピニオンの中では、まずはドキシサイクリンを1週間投与して、それからシタフロキサシンなどのキノロン系を2週間投与という、併用ではなくシークエンシャルセラピーとういう方法が推奨されています。まずはドキシサイクリンで細菌の細胞壁を少し痛めつける、障害を与えて、そして殺菌力の強いキノロンを投与して効果を期待するという治療が今あるということになると思います。マクロライド耐性を確認したい場合は自費(研究用)でレジスタンスプラスという検査キットがあります。これはアメリカなどでもまだ自費ですが、このような検査で先に耐性と分かった時にはキノロンで治療していき、マクロライド耐性とわかればドキシサイクリン、そしてシタフロキサシンを使うということになると思います。

マイコプラズマ・ジェニタリウムは日本では7、8割がマクロライド耐性です。逆に言うと、2、3割は感受性菌が残っています。そういう意味では、妊婦さんなどに対してはマクロライド系薬が使える場合もあると認識するしかないと思います。

Q6. 外来診療でのTV/MG検査の使い方について教えてください。

 

やはり基本的には婦人科の場合はCT/NGを否定ができた場合に、帯下異常がある場合にはTV/MGを行っていくということでよろしいと思います。
性感染症外来においても、やはりクラミジア、淋菌をまず否定することが大事だということは間違いないと思います。

Q7. マイコプラズマ・ジェニタリウムのマクロライド耐性の症例が多く、実際にキノロン耐性も増えているので治せないのではないのでしょうか?そうなると検査で調べても無駄なのではないでしょうか?

 

そんなことはないと思います。基本的に今はドキシサイクリンが第1選択薬です。それで効かなければシタフロキサシンを使用することになると思いますが、もしもそれでも治らなかったらとよく聞かれます。

それでも治らない場合は、ドキシサイクリンとシタフロキサシン併用っていうのを考えられる人がいますが、実は最近の新しい研究によると、ドキシサイクリンを1週間から2週間投与し、その次にシタフロキサシンを投与する、もしくはドキシサイクリンを7日間投与し、その後シタフロキサシンを7~14日投与するというシークエンシャルセラピーという方法で治ったという例があります。私のところに紹介された患者さんで、その治療法で治癒できた症例もあります。そのような治療の方法がありますので、調べても無駄という訳ではないですね。

 

Q8. マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症を治療しない場合の後遺症について教えてください。

 

私の研究論文で、骨盤腹膜炎となる率を確認していますが、クラミジアや淋菌ほど、いわゆるPID、骨盤腹膜炎に至る例というのは多くないと思います。しかしながら、詳細はまだまだ分からないんです。今、TV/MG検査ができるようになったので、ぜひ先生方がそういったケースを報告いただく、調査いただくということも大事です。ましてや、クラミジアの様に不妊症と関係するデータはまだほとんど出てきていませんので、ここも研究、今後の経過を待たないといけないと思います。

母子感染に関しては、基本的には産道に存在したものであれば、確実に伝播はすると思います。しかし新生児にマイコプラズマ・ジェニタリウムの肺炎あるいは結膜炎が起こるかどうかとか、呼吸器感染症があるかどうかとか、そういったことはいまだ報告がないので、ここはまだ今後の検討課題だろうと思います。

 

Q9. 保険診療においてCT/NGと同時にTV/MG検査を実施してもよいのでしょうか。

 

都道府県によって解釈が異なりますが、一つ言えることは最初からクラミジア、淋菌、マイコプラズマ、そしてトリコモナス、同時に検査したら多分査定されると思います。それを一律的に全員にやったら査定されると思います。

しかしながら、お手数ではありますが、レセプトに患者さんの症状詳記を記載した上で、この症例はクラミジアも疑うだけではなく、トリコモナスやマイコプラズマ・ジェニタリウムも疑うなどの記載をしてください。そしてこの症例に限って私は同時に初回にやったということをきちんと説明すれば、例えば月に20例中1例だけがそういった症例ということであれば、その審査の先生もお認めいただけることがあると思います。しかしながら4つ同時に検査というのは今の性感染症学会のガイドラインでも記載したように、保険診療上では難しいだろうと思っています。

査定されてしまうことが多くなるので、特にプライベートクリニックの先生方にとっては査定は影響がかなり大きいので、ご注意された方がいいと思います。基本的には疑い病名でもできますが、スクリーニング的に行うのは保険では償還されない、査定されてしまうと理解をいただくのがよろしいかと思います。

Q10. 保険診療においてはどのような傷病名や保険名を記載すればよろしいでしょうか。

 

TV/MGの検査をした時の病名をどのように記載するかについてですが、これは絶対につけていただきたいのは非淋菌性非クラミジア性の子宮頸管炎。そしてもう一つはマイコプラズマ・ジェニタリウム感染症というのをつけてほしいです。しかしマイコプラズマ・ジェニタリウム感染症が電子カルテの病名に登録されてない場合がまだまだ多いんです。だから私どもはどうしてるかというと、非淋菌性非クラミジア性感染症ともう一つはマイコプラズマ感染症と記載し、そしてそれらの疑いと付けて症状表記で面倒くさいですがマイコプラズマ・ジェニタリウム感染症を疑うためTV/MGを実施したと一言記載し、今のところは査定はされておりません。

電子カルテの会社によってマイコプラジェニタリウム感染症という病名がすでにあるところもあります。そのときは、マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症とつけていただければいいと思います。

 

Q11. 臨床ではTV/MGは細菌性腟症やクラミジアと同時感染も見受けられますが、社保ではSM培養で陰性ならTV/MG検査もしていいですよと言われ、SM培養とTVMGの同時検査の場合、当院では保険を切られてしまいます。検査を2回に分けて行ってくださいとのことですが、実際そのために患者はわざわざ行う人はおらずメリットが感じられません。保険制度の見直しも必要かと思いますが、いかがでしょうか。

 

査定に関するご質問ですね。社保と国保の査定の問題なので、ここがまだまだデーターが少ないという理由もあり起こってしまうかと思います。ご質問はもっともなんですが、なかなかこれを見直していくのは難しいですよね。クラミジア、淋菌の検査についても、今はクラミジア淋菌同時検査が可能ですが、昔はクラミジア、淋菌、別々の遺伝子検査でしたね。その時に同時に出したら大抵査定されてました。同時測定ができるようになるには、時間が必要なんだとは思います。

Q12. マイコプラズマ・ジェニタリウムだけではなく、ウレアプラズマについての検査の意義が気になります。ウレアプラズマ感染の婦人科領域における取り扱いについて教えてください。

 

ウレアプラズマはマイコプラズマ属の微生物です。ウレアプラズマで臨床的に問題となるものはウレアプラズマ・パルバムとウレアプラズマ・ウレアリティカムの2つです。

特に早産との関連が言われているのはウレアプラズマ・パルバムなんですけれども、実はここはまだ議論の余地があるんです。ウレアプラズマが早産と関係があるという論文もありますが、関係しないとの論文もあって、コントラバーシャルというのは否めないんです。そういう意味ではまだまだエビデンスがないので、保険で認められる状況にないという現実があります。自費診療(研究用)で検査ができるものもあり、おそらく郵送健診などで活用した患者さんが検査が陽性だったので治療をしてくださいとくることもありますし、先生方の中では早産傾向のある方にこのような検査を実施されていることもあるかと思います。ただかなり議論が分かれるところです。実際に私はある程度早産とも関係があり、慢性子宮内膜炎の原因になり得ると考えています。多分慢性子宮内膜炎というのは、特に不妊症の患者さんで現在非常に問題になっているので、関係ないとは言いませんが、まだまだエビデンスが乏しいというのが事実だろうと思います。

しかし多くの場合、マイコプラズマやウレアプラズマが存在すると、例えば子宮頸管に存在すると、子宮頸管の防御機構が破綻する可能性があります。破綻すると、当然腟内の常在菌である細菌が上行感染する可能性がありますので、そういう意味でも早産や破水、あるいは慢性子宮内膜炎と関連してくると言えると思います。しかし現在、ウレアプラズマについてまだ保険診療が認められていないのは、そのエビデンスが不十分だということなんです。実は泌尿器科領域で尿道炎の原因微生物としてマイコプラズマ・ジェニタリウムというのは私が研究を始めた25~26年前から病原性について言われるようになったと思います。ただし、なかなか保険適用されず、ようやく20年くらいしてようやく保険適用されたという事実があります。それはエビデンスが蓄積されたからなんです。ですから、今後は、ウレアプラズマが、やはり大事だという検査のエビデンスが確立されると、ウレアプラズマの検査も保険適用になっていく可能性はあります。

マイコプラズマもウレアプラズマもなかなか培養は難しいです。一般の医療機関で培養することは難しいですし、外注検査であってもこれらの培養までやってくれるところはないと思います。遺伝子検査は理論的にはすぐ設計できますので、エビデンスが明らかになってきた時に、おそらく今後これらの検査法も出てくるだろうと思います。

ウレアプラズマについては基本的にはマクロライドということになろうと思いますけれども、マクロライドと言うとアジスロマイシン、クラリスロマイシンになりますが、もちろんキノロンも菌種によって使えるものがあります。まずはマクロライドでよろしいんじゃないかと思います。

他のマイコプラズマではホミニスが問題ですよね。これは先生方は特に帝王切開後の腹腔内感染で細菌感染を疑って、いろんな抗菌薬やっても効果がないという時に、実はマイコプラズマ・ホミニスの感染だったということはしばしばあります。ですから、そういう意味では今後マイコプラズマ・ホミニスは、検査キットが開発される可能性があります。

マイコプラズマ・ホミニスとウレアプラズマ・パルバムを同時で検査するキットが開発されていくんだろうと思いますけど、今のところ私が知る限りキットの開発をやっているところは今ありません。

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