ウイルス性肝炎は世界的に重大な問題です。特に、B型およびC型肝炎は、何億もの人々に慢性疾患を引き起こすと共に肝硬変や肝臓癌の最大の原因です。毎年、百万人を超える人々がB型およびC型肝炎に起因する疾患で死亡しています。多くの感染者は感染していることを知らず重症肝疾患を発症し、ウイルスを他の人々に感染させるリスクを増加させています。
疾患への理解が進むにつれて診断、疾患管理および治療へのアプローチも同時に進化しています。正確な検査によって治療期間と薬剤の投与量を決定する個別化治療戦略がますます重要になっています。
肝臓は、肺の下部、腹腔の右側にある体内で最大の固形臓器で、主に以下の4つの機能があります。
これらはすべて生命に不可欠な機能です。
肝炎は、文字通り「肝臓の炎症」を意味し、多くの原因があります。主な原因はウイルス感染で、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)などにより発症します。その他としては、デルタ肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルスや黄熱病ウイルスなどのウイルス感染、細菌感染、薬剤性肝炎などがあり*1、さらに自己免疫*2または代謝疾患*3に起因することもあります。原因がウイルスである場合、体はウイルスを攻撃するために免疫反応を開始します。これらのウイルスは、より多くのウイルスを複製し産生するために肝細胞に入る必要があり、免疫系は肝組織を攻撃して肝障害を引き起こします*4。
参考資料・文献
ウイルス性肝炎は、急性(6カ月未満で鎮静化する)または慢性(6カ月以上持続する)疾患です*4。急性肝炎の患者は、原因ウイルスにかかわらず同様の症状を示しますが、多くの症例は無症候性で患者は自分が感染したことに気づかないことも多々あります。感染の初期段階としては、発熱、疲労、脱力、悪心と嘔吐、四肢痛や筋肉痛、肝臓周辺の疼痛や肝肥大、およびインフルエンザ様症状などがあります*5。患者はその後、眼や皮膚の黄変、色の濃い尿、白色便などを特徴とする黄疸を発症することがあります。黄疸は、肝臓がビリルビン(胆汁の黄色い成分)を処理できないことによって引き起こされ、ビリルビンが血中に蓄積した状態です*4。慢性肝炎患者は症状を示さないことも多いですが、疾患による肝障害が正常組織を傷つけ、線維化を進行させ、肝硬変、肝細胞癌(HCC)、末期の肝不全などの極めて重大な疾患に進行することがあります*6*7。
参考資料・文献
肝炎の診断は、血清と尿中ビリルビン濃度、総タンパク量、血清アルブミン濃度、ALT、AST、ALPなどの肝機能の生化学的検査によって行われます。しかし、肝炎の原因を決定するには、特異的検査が行われなければなりません。これには、患者の血清中のウイルス粒子、ウイルスDNA/RNA、ウイルス抗体の検出などがあります*4。
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