Article

抗体検査 - COVID-19との闘いにおける次のステップ

ロシュ・ダイアグノスティックスの抗体検査へのアプローチ

ロシュ社のElecsys シリーズのSARS-CoV-2抗体試薬は米国食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を受けています。ロシュ・ダイアグノスティックスのシニア・サイエンティフィック・アフェアーズ・マネージャーであるLaura Parnas氏(PhD)が、COVID-19に対して医療を支援するロシュ社のツールであるElecsys® Anti-SARS-CoV-2 RUO に関する質問に答えています。

 

Q:抗体検査とはどういう検査で、COVID-19の世界的大流行に対してどのように役立つのでしょうか?

 

Dr. Parnas:抗体の基本的な役割は、体内で異物を認識し、害を及ぼさないように異物をブロックすることです。抗体検査は、血清学的検査ともいいますが、病原体に対する人の免疫反応に関する情報を得るための血液検査です。

現在のCOVID-19の世界的流行下において、抗体検査は、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2にどれだけの人が曝露したか、または曝露していないかを知る際に役立つ可能性があります。抗体検査は、医療従事者がウイルスの伝播をよりよく理解するためだけでなく、感染者の治療に役立つ可能性のあるヒト血漿ドナー候補者を特定するうえで有用となると考えられます。SARS-CoV-2は新しい病原体であるため、抗体が再感染を防ぐかどうかはまだわかっていません。

 

Q:抗体検査はどのようにデザインされていますか?

 

Dr. Parnas:抗体検査は、以下の3つのデザインが考えられます。

  1. IgA、IgM、IgGなど特定の抗体クラスを検出するデザイン
  2. IgMとIgGの両方を含めた「トータル抗体」を検出するデザイン(この場合、IgMとIgGなど抗体クラスは識別されません。)
  3. 高親和性抗体を検出するデザイン
    Elecsys Anti-SARS-CoV-2 RUO アッセイは、抗体クラスにかかわらずSARS-CoV-2に対する高親和性抗体を検出するよう設計されている点で、現在市販されている他の抗体検査とは一線を画しています。

 

Q:高親和性抗体とはどのようなもので、なぜ重要なのでしょうか?

 

Dr. Parnas:抗体は、病原体に反応して変化していきます。人の体内にウイルスが初めて出現したとき、まずウイルスに対する親和性の低い抗体が産生されます。この抗体は、ウイルスに効果的に結合して除去することができません。

人の免疫応答が進むと高親和性の(成熟した)抗体が産生され、ウイルスに結合して中和できるようになります。この高親和性抗体は、感染過程の後期に出現します。IgGは通常、免疫応答の後期に発現する抗体ですが、SARS-CoV-2においては免疫応答の初期に低親和性IgGが発現することを示すエビデンスがあります。.2,3 低親和性抗体と高親和性抗体を区別することができれば、抗体検査全体の精度を高められます。

 

Q:高親和性抗体は中和抗体と同じものですか?

 

Dr. Parnas:ウイルスに結合して感染を阻害する抗体である中和抗体は、感染によって産生される抗体のうちのごく一部です。抗体検査はもともと中和抗体と非中和抗体を識別するようデザインされたものではありませんが、高親和性抗体の検出を目的とした検査では中和抗体も検出される可能性が高くなります。現時点では、SARS-CoV-2に曝露した患者に中和抗体が存在するかどうか、また免疫反応が防御免疫につながるかどうかについて明確なエビデンスは得られていませんが、研究が続けられています。

 

Q:抗体検査をデザインした際、考慮されたその他の特徴にはどんなものがありますか?

 

Dr. Parnas:デザインを決定するために、我々は多くの研究開発を行い、40種類以上のアッセイフォーマットから最適なものを選びました。鍵となったのは、SARS-CoV-2のみに対して高親和性を有する抗体の特異性が高い検査方法であることでした。IgGやIgMなど特定の抗体クラスを検出するよう設計された検査では低親和性抗体と高親和性抗体を区別できず、特異度が低くなる可能性があります。ロシュの検査は高親和性抗体のみを標的とするようデザインされているため、感冒やインフルエンザのウイルスなど、他の抗ウイルス抗体を検出して偽陽性となるリスクが最小限に抑えられています。

 

Q:抗体検査の精度を評価する際、特異性がそこまで重要な理由はなんですか?

 

Dr. Parnas:良い検査は感度と特異性が高いものです。感度とは、SARS-CoV-2に対する抗体の存在を検出する能力を指します。特異性とは、SARS-CoV-2に曝露していない人を特定できる能力を指します。抗体検査では、高い特異度は偽陽性率を低く抑えられる可能性が高いことを意味します。SARS-CoV-2感染の有病率が低い集団の場合、臨床的特異性の高さも重要です。これは最終的に検査の陽性的中率(PPV)に影響します。特異性が高くなるようにデザインされた検査を用いることで、特に低有病率の集団において、SARS-CoV-2に曝露した患者を信頼性をもって特定できます。

 

Q:ロシュの抗体検査が陽性の場合、COVID-19の感染を予防できる免疫があるということですか?

 

Dr. Parnas:現在、SARS-CoV-2という新たなウイルスに対する免疫応答や、これまでに産生された抗体が中和能を有するかどうかを評価する研究が行われています。この感染症とそれに関する知識は今後も数週間から数ヵ月単位で進んでいくと考えられます。それに伴い、免疫において抗体検査が果たす役割をより深く理解したいと私たちは考えています。

参考文献:

  1. Elecsys® Anti-SARS-CoV-2 method sheet (v2, May 2020)
  2. KKW et al. (2020). Lancet Infect Dis 2020; DOI:10.1016/ S1473-3099(20)30196-1
  3. Long et al. (2020). Nat Med. https://doi.org/10.1038/s41591-020-0897-1

Elecsys Anti-SARS-CoV-2 RUO: 臨床データ1

ロシュは、5,000検体を超える検体を用いて、アッセイを徹底的に評価し、以下の結果を得ました。

  • PCR陽性確認14日経過後で感度は100%:
  • 5,272検体の検査により得られた特異度は99.81%:
  • 感冒及びその他の既知のコロナウイルス感染後に感染患者から得られた交差反応性をもつ可能性のある検体(80検体)で交差反応性なし

抗体検査関連製品

抗体検査関連情報