新型コロナウイルス感染パンデミックにおける抗原定性検査の役割

抗原とは何か? 
そして抗原検査の仕組みとは?

抗原とは、タンパク質など、体内で異物として認識され、免疫系による抗体産生を引き起こす分子です。抗原検査は、この体内で異物となるタンパク質を検出するために用いられます。このタンパク質は病原体の構造、または機能を決定づけるものであり、それぞれの病原体に固有のものです。抗原検査には定量検査と定性検査があり、その内定性検査では、患者の検体中での病原体の有無について、「陽性/陰性」との判定結果が得られます。標的抗原が検体中に十分な濃度で存在する場合、特異的抗体に結合し、陽性結果が出ます。²　抗原検査は長年にわたって実施されており、検体を採取してから数分以内にレンサ球菌咽頭炎やインフルエンザなどの病態を迅速に診断する検査法として提供されています。

抗原定性検査の利点とは?

SARS-CoV-2抗原検査は、PCR検査が実施できない場合の代替手段として使用したり、遺伝子検査と併用することができるため、私たちが現在直面している最大の課題の一つである検査規模の拡大に対しての解決策として利用することが可能です。また、抗原定量検査は比較的安価なため、医療機関や臨床検査センターでの検査回数を増加させることで、COVID-19と闘う医療システムを支援することができます。大型分析装置による抗原定量検査は、解析エラーが自動化により回避できるだけでなく、検査所要時間が短く、検体処理能力が高いため、医療費と判定の誤りの軽減に寄与します。一方、抗原定性検査は、学校、刑務所、介護施設、プライマリーケアのクリニックなど、従来の医療環境以外の場所でも容易に実施することができるため、きわめて有用です。こうした施設で治療開始前に検査を実施することで大きなメリットが得られると考えられます。 抗原定性検査は、検査結果が得られるまでの時間が短縮され、リアルタイムで利用可能なため、ウイルスの有病率が高い地域での感染拡大抑制にも有用です。検査結果が出るまで何日も待たされ、その間に他の人に感染させる可能性がある検査方法と比べ、検査後数分以内に陽性患者を隔離することができます。

抗原定性検査はいつ実施されるべき?

抗原定性検査は、症状のある患者では通常、感染の早期段階でウイルス量が最も高い場合に、最もすぐれた効果を発揮します。迅速かつ反復的な検査により、ウイルスの伝播を抑制し感染症に対する免疫の弱い人を保護することができるため、抗原定性検査は学校や介護施設などの密集した環境で特に有用です。 一般に、抗原定性検査は特異性が高く、検査対象となる症状がない人については、陰性結果を正確に得ることができます。特異度が高い検査は、偽陽性が少なく、感染していない人を除外する場合に好ましい検査法といえます。ただし、重要な点として、標的ウイルスDNAまたはRNA配列を増幅して検体中のウイルスの存在そのものを検出するPCR検査に比べ感度は低くなります。 こうした理由から、抗原定性検査の低い感度を補うために、結果が陰性の場合には、COVID-19曝露歴、臨床症状、患者の診断や治療方針の決定に役立つ異なる検査の結果など、その他の患者情報と合わせて判断する必要があります。

抗原定性検査は、どのような場合に有用か？

世界各国の政府や医療制度は、COVID-19の感染拡大に対応できるレベルにまで検査処理能力を向上させる必要に迫られています。 また、PCR検査は精度の点で最も信頼できる検査法ではありますが、COVID-19の感染がパンデミック状態である時に、検査数を拡大することは非常に困難です。こうした世界的なニーズに対応するには、より簡単に製造でき、大量に配布できる他の検査方法によって補う必要があります。抗原定性検査は、ウイルス感染が拡大している地域等で簡単に実施でき、迅速に結果を得ることができるため、このギャップの解消に有用です。この結果、検査処理能が向上し、ウイルスの感染拡大を抑制することができます。