隠れた性感染症
マイコプラズマ・ジェニタリウム(Mgen)は性器同士の直接接触を介して伝播する複雑な細菌性感染症です。この性感染症(STI)にかかっている人の多くは無症状ですが、女性では子宮頚管炎に伴う疼痛および不快感、男性では尿道炎を引き起こします。
この感染症が原因となる疾患とその割合:
- 非淋菌性尿道炎(NGU)の15~20%1
- 非クラミジア性NGU1の20~25%
- 持続性又は再発性尿道炎の30%1
マイコプラズマ・ジェニタリウム(Mgen)は性器同士の直接接触を介して伝播する複雑な細菌性感染症です。この性感染症(STI)にかかっている人の多くは無症状ですが、女性では子宮頚管炎に伴う疼痛および不快感、男性では尿道炎を引き起こします。
この感染症が原因となる疾患とその割合:
女性では、マイコプラズマ・ジェニタリウム症例の多くが無症状です。
そのため、気づかないうちにパートナーからパートナーへと感染する可能性があり、大きな課題となっています。
兆候や症状
Mgenに感染してもほとんど症状が出ないことが多いといわれていますが、もし下記のような状況があれば医師に相談しましょう。
・生殖器からの異常な下り物や分泌物
・排尿時の痛み
・性交渉後の出血
・発熱を伴う下腹部痛
予防
Mgenはまだ知られて間もない微生物であると思われますが、研究の結果、当初考えられていたよりも危険であることが判明しました。
マイコプラズマ・ジェニタリウムを治療せずに放置すると、男女とも深刻な健康被害につながる可能性があります。骨盤内炎症性疾患(PID)、早産や流産など妊娠への悪影響、HIV感染のリスク増加、性行為により感染した反応性関節炎、不妊症などが挙げられます3,4。
マイコプラズマ・ジェニタリウムは、最近になって性感染症として認識され始めたため、ほとんどの国ではその感染状態を検査するプログラムが導入されていません。しかし、疾患の負担増大、抗生物質耐性の上昇、HIV感染のリスクが3倍になることなどから、正確で効率的な診断ツールと方法論が極めて重要になっています。
今日では、核酸増幅検査の進歩により、それまで不可能だった感染症の研究や診断が可能になりました。マイコプラズマ・ジェニタリウムは、きわめて特殊な栄養素や増殖条件を必要とする偏好性の栄養要求生物です。そのため、培養などの時間のかかる診断技術では、この微生物を増殖させて診断することはできません。
そこでPCR技術を用いることで、この謎めいた生物がどのように機能しているのか、また増加し続ける患者集団の中でどのように同定し、治療することができるのかを解明できるようになりました。
抗菌薬耐性は、Mgenを含む細菌感染症の効果的な予防と治療を脅かします。Mgen感染における抗菌薬耐性の出現により、2009年以降、治療成功率が低下しているほか5、第一選択としての抗菌薬の経験的な使用を継続することで、Mgenの耐性株が広く伝播しています。
抗菌薬耐性に対抗するためには、医薬品の規制や処方方針が重要な役割を果たしますが、臨床医はこれらの困難な菌株や関連する抗菌薬耐性を検出するための新しい遺伝子検査法を導入する必要があります。
オーストラリアや欧州の一部の国ではMgenの治療法としてMGの薬剤耐性を確認したうえで投薬方法を決定するResistance Guided Therapyをすでに導入しています。
Mgenに対するResistance Guided Therapyは治癒率を劇的に向上させます4。診断ツールを活用してMgenの抗菌薬耐性株を特定することで、医療従事者は最も適切な治療法を選択することができます。
参考文献