本抗体は、受容体型チロシンキナーゼであるROS1タンパクに対するウサギモノクローナル抗体です。 ROS1遺伝子が他の遺伝子と融合することによって、ROS1のキナーゼドメインが恒常的に活性化するROS1融合タンパクを産生し、細胞の癌化につながるといわれています1,2。ROS1の融合遺伝子は、、神経膠芽腫2,3、胆管癌2,4、卵巣癌2、非小細胞肺癌1,2,5,6などで報告されており、非小細胞肺癌(NSCLC)におけるROS1遺伝子の再構成の頻度は1-2%程度と言われています5,6。融合相手の遺伝子はさまざまで、これまでに少なくとも27遺伝子が報告されています7。本抗体による免疫組織化学染色において、いくつかのスコアリング基準を用いた場合、FISH法と良好な相関性を示すことが報告されています8。
抗p40(BC28)抗体は肺扁平上皮癌において抗p63(4A4)抗体と同等の検出感度を有し、扁平上皮マーカーとしての特異性は抗p63(4A4)抗体よりも優れていることが報告されています9,10。肺腺癌がp63陽性により誤って肺扁平上皮癌と同定されることを避けるために、肺腺癌/扁平上皮癌の鑑別において抗p63抗体の代わりに抗p40抗体の使用が推奨されます。診断の精度を上げるために、TTF-1, Napsin A, CK5/6などの他の肺癌マーカーと組み合わせて使用することが推奨されます9。
TTF-1はホメオドメインタンパクファミリーに属する38kDの転写因子であり、甲状腺の濾胞上皮細胞、肺のII型肺胞上皮細胞、クララ細胞で発現しています。肺癌においては甲状腺癌の転移を除いて他の臓器からの転移性腫瘍では発現していないため、原発か転移かの鑑別が可能となります11。また、正常中皮および中皮腫にも存在しないため、肺腺癌と中皮腫の鑑別にも有用です。p40, Napsin A, CK5 /6などの他の肺癌マーカーと組み合わせて使用することが推奨されます9。
抗サイトケラチン 5/6抗体は、抗サイトケラチン 5抗体と抗サイトケラチン 6抗体のカクテル抗体です。本抗体は種々の上皮および中皮細胞に発現するサイトケラチン 5と、増殖性の扁平上皮で発現するサイトケラチン 6に反応します12。細胞質への染色パターンを示し、扁平上皮癌や、悪性中皮腫と肺腺癌の鑑別に用いられます13。また、本抗体による筋上皮細胞の検出は、乳癌および前立腺癌の鑑別にも有用です。p40, TTF-1, Napsin Aなどの他の肺癌マーカーと組み合わせて使用することが推奨されます9。
ナプシンはペプシン様のアスパラギン酸プロテアーゼで、ナプシンAとナプシンBが存在します。ナプシンAは、分子量約38kDの単鎖タンパクであり、ヒトの肺および腎臓に高度に発現し、脾臓では発現が少ない。免疫染色では、Ⅱ 型肺胞細胞および肺腺癌で陽性となります9。肺腺癌におけるナプシンA発現は特異性が高いため、原発性肺腺癌と他臓器の腺癌の鑑別に有用です14。p40, TTF-1, CK5/6などの他の肺癌マーカーと組み合わせて使用することが推奨されます9。
References
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