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PCRとは

PCR:DNAの複製方法

 

ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、DNAまたはRNAの小さなセグメントをコピーまたは「増幅」するための効率的で費用効率の高い方法です。

PCR法を用いると、わずか数時間でDNAのある領域が数百万倍にまで増幅され、解析に必要な十分な量のDNAが複製されます。この革新的ながらも簡便な方法によって、臨床医は血液や組織のような最小量の検体を用いて疾患を診断したり、モニタリングしたりすることができます。

 

PCRとは

PCRを介した検体調製は、in vitro、すなわち検査室内の体外で行われますが、DNA複製の自然な過程に基づいています。最も単純な形態では、DNA検体やDNAポリメラーゼ、ヌクレオチド、プライマーおよび他の試薬(人工の化合物)が検体チューブに添加された時に反応が生じます。試薬はDNAコードの複製に必要な反応を促進します。

PCRは、検体中の疾患を検出することに加え、ヒトの体内に存在するウイルスの量、すなわちウイルス負荷のモニタリングを可能にします。C型肝炎やヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症などの疾患では、ウイルス負荷は、疾患の重症度や薬や治療の効果を示す良い指標となります。この情報を武器として、医師は治療開始時期や患者の治療応答を判定し、個々の患者に合わせた治療を行う場合があります。

各PCRサイクルには3つの明確な段階があり、各サイクルにおいて標的DNAは約2倍の量に増幅されます。これは指数関数的な反応であり、30~40回のPCRサイクルで元のDNAまたは「標的」DNAのコピーが10億以上複製されることになります。

 

検体調製

PCRを開始する前に、DNAを検体から分離する必要があります。DNA抽出プロセスは複数の段階で構成されています。手作業または人間が介入せずに自動で検体調製を行う初めての機器、COBAS® AmpliPrep Instrumentなどを用いて行うことができます。検体調製後、3段階から成るPCRの工程が開始されます。

 

1. 標的DNAの分離 — 変性

PCRの最初の段階は「変性」と呼ばれ、検体DNAを含んだチューブを90°C(194°F)以上まで加熱します。こうすることで、二本鎖DNAは2本の一本鎖へ分離します。温度の上昇により、DNAコードを形成するヌクレオチド間の比較的弱い結合が切断されます。

 

2. プライマーのDNA配列への結合 — アニーリング

PCRは、検体中のすべてのDNAを複製するわけではありません。PCRプライマーが標的とする非常に特異的な遺伝コードの配列のみを複製します。例えば、クラミジアはクラミジアに特異的なヌクレオチドの固有のパターンを有しています。PCRは、クラミジアに存在し、他の細菌種には存在しない特異的なDNA配列のみを複製します。このような複製を行うため、PCRは、プライマー、すなわち合成オリゴヌクレオチド(合成DNAの短い一本鎖)を、標的DNA領域のいずれかの側の配列にのみ結合、すなわちアニーリングします。第2段階では2本のプライマーを使用し、新たに分離した一本鎖DNAにそれぞれに1本ずつ結合します。プライマーは複製される配列の開始点に結合し、第3段階に備え、その配列に印を付けます。第2段階でチューブを40~60°C(104~140°F)まで冷却すると、プライマーの結合が生じます。第2段階では、プライマーの印が付された配列を有する一本鎖DNAが2本産生されます。この段階で、これら2本の一本鎖DNAは複製の準備が整いました。

 

3. 複製する — 伸長

PCR反応の第3段階は「伸長」と呼ばれ、温度を約72°C(161.5°F)まで上昇させます。プライマーの印が付いた領域を開始点として、溶液中のヌクレオチドがDNAポリメラーゼによってアニーリングしたプライマーに付加され、各一本鎖テンプレートにDNA相補鎖が新しく合成されます。伸長が完了すると、元のDNAと同一の2コピーが複製されています。

PCRを介してDNA2コピーを複製した後、このサイクルを再度開始しますが、これには新たに複製したDNAを使用します。各複製によって新たに2コピーが複製されるため、このPCR手順を約30~40回繰り返した場合、元のDNA断片が10億コピー以上複製されることになります。PCRの工程は自動化されているため、わずか数時間で完了することが可能です。医療現場では、PCRは臨床検体から十分な量の標的DNAコピーを複製し、解析を可能にしています。これらの診断およびモニタリング検査の結果は、臨床医や他の医療従事者へ治療を導く情報を提供しています。